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能登半島地震被災地視察報告

令和6813日に天理教災害救援ひのきしん隊隊長の吉澤さんの案内で、能登半島地震で甚大な被害を受けた珠洲市を訪問し、被害状況や支援活動の状況について視察を行った。

 

●参加者

ホリカフーズ株式会社 目黒氏、有限会社鈴文 鈴木氏、新潟県産業政策課 白川氏、(公社)中越防災安全推進機構 諸橋、河内

●視察行程

・メルヘン日進堂(トイレカー設置場所)
・災害ボランティアセンター
・技術系ボランティアの支援拠点
・珠洲市内の仮設住宅
・災害ゴミの仮置き場
・被災家屋の屋根修理現場

 

●視察

① メルヘン日進堂(トイレカー設置場所)

メルヘン日進堂社長石塚氏より被災当時の状況や災害支援活動、トイレカー設置に関わるお話をお聞きした。石塚さんからのお話の概略は以下の通り。

震災直後の生活

震災が発生した11日から5日の朝までの間、自宅で大人5人が避難生活を送りました。自宅は津波によって浄化槽が隆起し、逆流するなど非常に厳しい状況でしたが、雨水をためるなどして何とか凌ぎました。電気は復旧していませんでしたが、正月用の食べ物が少し残っており、ストーブでお餅を焼いて過ごすことができました。

近くのコンビニエンスストアは停電によりレジが使えない状況だったため、商品を自由に持ち帰らせてくれました。冷凍食品やカップ麺を5人分受け取り、自宅でお湯を沸かして食べることができました。

近隣の避難所では、ストーブや毛布がなく、電気もないため真っ暗な中、非常に寒く、体を寄せ合って過ごすしかありませんでした。食べ物が不足しており、多くの人々が困窮している状況でした。もう一か所の避難所である体育館は、すべてのライトが落ち、掃除用具もなく、避難所としての機能を果たしていませんでした。そのため、多くの人が外で過ごすしかなく、焚火をして寒さをしのぎましたが、トイレも使用できず、外で用を足すしかないという厳しい状況でした。さらに、トイレットペーパーやティッシュも不足しており、状況は非常に深刻でした。

避難所での食事状況

15日に避難所へ移動しました。避難所では、さまざまな非常食をいただきました。最初に支給されたのはパンやアルファ化米でした。アルファ化米は種類が豊富で15分から20分で食べられるものから、5分で食べられるものまでありました。白米のほかにもさまざまな味がありました。普段あまり食べない缶詰も非常食として出されました。

特に印象に残っているのは、ホリカフーズさんの発熱材で温めることができる牛丼や中華丼(レスキューフーズ)で、その美味しさと画期的なアイデアが心に残っています。

歯磨きや入浴ができず、2週間もの間、顔も洗えないという過酷な状況に置かれていました。震災でライフラインがすべて途絶えた環境は、これまで経験したことのないものでした。また、工場の冷蔵庫や冷凍庫に残っていた食べ物も配って消費しようとしましたが、それでも腐ってしまい、非常に深刻な状況でした。

 

支援拠点としての工場提供

当時、自衛隊や医療関係者は建物で寝泊まりしながら支援活動を行っていましたが、民間の支援団体の宿泊場所がない状況だったため、誰かの役に立つ方法を考えた結果、製造が止まっている工場を支援者に提供することに決め、天理教災害救援ひのきしん隊の皆さんに工場を使ってもらうことになりました。

宿泊場所として利用できるようにするために、工場の作業テーブルを片付け、被災した実家で不要になった畳を工場に運び込んだ他、工場の水道管に給水車の水を流し込み、水道を使えるようにしてくれたことで、被災者支援のための炊き出しも行えるようになりました。

工場は51日まで再開できませんでしたが、その間にメルヘン日進堂を支援活動の拠点として活用してもらったことで、75日間にわたり、延べ2565人の方に滞在いただき、6744食の炊き出しの提供や復旧作業にあたってもらうことができました。

 

トイレカーの設置・管理

水や電気がいつ復旧するか不明な状況の中、119日にトイレカーを設置していただいたことで、地域住民の不安が大いに和らぎました。住民の皆さんは、目の前の不安や将来への不安など、多くの不安を抱えていましたが、トイレカーの設置により、その不安の一つが解消されたことは非常に大きかったです。

319日までは、ひのきしん隊の皆さんが毎日トイレのメンテナンスを行ってくれましたが、4月からは拠点を輪島市の航空学園に移すことになったため、トイレカーの管理を私たちが引き継ぎ、619日まで管理させていただきました。トイレを掃除しながら、利用してくださる皆さんが健康であるようにと願いながら管理を続けました。水が使えない中、トイレがあることで地域住民のコミュニティが形成され、安心感を得ることができました。

おかげさまで、多くの皆さんと触れ合う機会をいただき、人は人との触れ合いを通じて次の一歩を踏み出すことができると実感しました。手を取り合い、助け合うことこそが大切だと感じ、震災がなければお会いすることもなかった皆さんとの出会いが、私にとっては宝物だと思っています。

② 災害ボランティアセンター

珠洲市災害ボランティアセンターを訪問し、災害ボランティアセンターでの活動の様子を見せていただいた。

災害ボランティアセンターでは、個人のボランティアの受付を行っておらず、石川県に災害ボランティア登録した上で、県の運行しているボランティアバスに乗車し、現地で活動を行うか、ひのきしん隊のようなこれまで新実績のあるボランティア団体による活動に限られている。

災害ボランティアセンターの運営は、珠洲市社会福祉協議会を中心に全国の社会福祉協議会やNPOの応援により行われている。

③ 技術系ボランティアの支援拠点

一般ボランティアでは作業が難しい屋根上の作業や重機を用いた作業を担う技術系ボランティアの支援活動拠点が、日本財団の支援により珠洲市内に設置されている。

技術系ボランティア団体の他、全国の消防士もボランティアで支援に集まってきている。資機材などは技術系ボランティアの皆さんが持参してこられるが、一部資機材や食料などが支援拠点も置かれている。

各地での災害の多発や、平時から技術系ボランティア団体による消防士向けの技能講習などが行われていることもあり、災害時にボランティアで活動をする消防士のネットワークが形成されてきている。

④ 仮設住宅

珠洲市内の仮設住宅。まだすべての仮設住宅の建設が終わっておらず10月まで建設が予定されている。

⑤ 災害ゴミの仮置き場

災害現場から運ばれてきたゴミが、仮置き場に種類ごとに分別されておかれていた。ダンプなどがひっきりなしに仮置き場に分別されたゴミを運んできていた。

⑥ 被災家屋の屋根修理現場

被災した家屋の屋根を修理している現場において、修理作業を行っている技術系ボランティアの方から作業の様子や、作業上の課題について話を伺った。屋根に落下防止用の命綱を設置する場所がないため、安全に命綱を固定するための器具などがあると助かるということで、意見交換を行った。

●視察参加者からのコメント

ホリカフーズ株式会社 目黒智大氏

【災害支援の課題】

・水が使えない状況での食料支援が大きな課題である。レスキューフーズのようにライフラインが停止しても喫食できる製品は大いに役立つ。しかし、自治体の食料備蓄は賞味期間、コストの観点からアルファ化米、カンパンが主流である。今後、自治体の食料備蓄の内容の見直しを推進するべきと考える。

【商品開発の展望】

・避難所生活が長期化する中で、健康上の二次災害を防止するため、ビタミンB1やリン、カリウム、マグネシウムを中心としたミネラルを含んだ災害食の開発を検討する。
・被災直後の食の支援については、備蓄だけではなく、様々な支援が必要であると感じた。
・今後、炊き出しの負担軽減につながるような商品開発も検討をしたい。

 

有限会社鈴文 鈴木一氏

・珠洲市の住宅は能登瓦葺きの家が9割近くと見受けられたが、ほとんどの屋根の瓦がずれ、落下している。ハシゴのぼり屋根を修繕している作業者が安全にハシゴに登り下りする機構を提案したい。

・被災した時にトイレの代用にできるものを開発していきたい。(排泄物の受、プライバシーの配慮など)